偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「俺の母さんと父さんは駆け落ちをして一緒になったんだ。俺は大学を卒業するまでここが母さんの故郷だとは知らなかったし、もちろん母さんの実家のことなんて知りもしなかった」

「お母さんの実家が小鳥遊家で、敬の奨学金を勝手に返してくれたのが小鳥遊副院長なのね?」

「ああ、奨学金の返済だけじゃない。父さんの入院先を手配してくれたのも、施設に入る時の資金を用立ててくれたのもおじさんだった」

大学を出てこっちに来てからはずっとおじさんの世話になっていた。
俺が子供の頃から入退院を繰り返してきた父さんには多額の借金があり、俺がその金の返済ができたのもおじさんが奨学返済や父さんの入院費用を用意してくれたから。俺一人だったらきっと自己破産していただろう。

「それだけの恩があるのね」
「そうだな。でも、それだけじゃない」
「他にも?」
「ああ」

ここからは少し外聞をはばかられる話になるからと、俺は姿勢を正して少し真理愛に近づいた。
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