追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
精霊憑きの少年たち
カーテンの隙間から入る柔らかな朝日が、ベッド上のモニカを照らしている。

バーヘリダムに来て十日が経ちこの豪華な部屋にはすっかり慣れたが、良眠は得られない。

シュナイザーとバンジャマンに与えられた、精霊に名を聞くという課題をクリアできず、気になって眠りが浅いのだ。

今朝も日の出前に目覚めてから二時間ほど、ベッドに身を起こしてガラス玉に話しかけている。

ガラス玉はバンジャマンにもらったもので、紅白の組紐をつまんで揺らすと、中の水がチャプンと小さな音を立てた。

精霊の姿は見えないので、ガラス玉を精霊と思えば話しかけやすい。

「今日もいい天気よ。バーヘリダムは過ごしやすい気候だと思わない? ねえ、そろそろなにか言ってくれないかしら。独り言はつらいわ。まずは返事だけでもいいわよ。できれば名乗ってくれると嬉しいけど。ねえ、ねえってば」

うんともすんとも言ってくれない精霊に、モニカはため息をついた。

するとドアがノックされナターシャの声がした。

「モニカ様、おはようございます。ご起床されていらっしゃいますか?」

「なっちゃん、おはよう。どうぞ入って」

入室したナターシャはモニカがガラス玉を揺らしているのを見てクスクスと笑った。

「今朝もそれですか。精霊とは会話できました?」

「ううん。無口なうえに頑固みたい。おはようくらい返してくれてもいいのに」

水の精霊憑きであるとナターシャに打ち明けたのは、バーヘリダムに来て二日目だった。
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