契約結婚のススメ
 注文する様子を見ても、やはりこなれている。

 女性店員が立ち去ったところで早速聞いてみた。
「イタリア語とってもお上手なんですね。もしかしてこちらにお住まいなんですか?」

「住んでるわけじゃないんだけど、仕事で数か月滞在したりするんだ。君は?」

「私は学生で、夏休みに短期でホームステイをしています。イタリア語は片言しか話せなくて」

「そっか。でもそんなふうには見えないな。君こそこっちで生活してそうだ」

 彼はフッと微笑む。
 その微笑みに、またしても私は胸がときめいてしまい、慌てて目をそらした。

 つい彼についてきてしまったけれど、考えてみたら私は男性とデートした経験がない。

 クラスメイトと学食でランチを一緒にするくらいならあるけど、あれはデートとはいえないし。飲み会は参加しないから。

 でも彼は違うだろう。女性との食事も慣れていそう。

 ラフな感じの薄いグレーのスーツを涼しそうに着こなしている。年齢は二十代後半かな。まさかファッションモデルだったりして?

< 12 / 203 >

この作品をシェア

pagetop