月の砂漠でプロポーズ
告白
 目覚めたときにはベッドの上だった。

「おはよう。といっても十六時過ぎだが」

 諒さんが私が横になっているベッドに腰かけていた。
 ごく自然に私は彼に手をのばし、諒さんは私に屈みこんでキスしてくれた。

「……あ……」

 キス。
 唇と唇の。

「也実の気持ちを確かめるまで我慢しようと思っていたんだが」

 窓の外はまだ明るい。
 けれど、諒さんの双眸には夜を思わせる光があった。

「也実が好きだ」

 世界が息を止める。

「渡海の名を持つ俺に媚びない也実が新鮮だった。旅が好きな也実なら、風に吹かれるまま旅したい俺の気持ちをわかってくれるんじゃないかと思った」

 わかる、と言い切れないかもしれない。
 けれど、渡り鳥のように浮き立ち、飛びたたねばと焦燥に似た想いをだいてはいる。
 そう告げると。

「俺もだ」

 彼の唇が再び、私の唇に触れた。
 離れては触れて。
 触れ合う時間がどんどん長くなっていく。

「……ふ、ぅん……」

「ここは二つベッドルームがあるんだ」

 諒さんは唇すれすれに囁いた。

「也実が怖いなら別々の部屋で眠ろう」

 貴方を失うこと以外はなにも怖くない。
 でも。

「令嬢の話は嘘?」
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