月の砂漠でプロポーズ
弁護士は謎
 概容が見えてくるにつれて、不思議に思った。

「……TOKAIヒルズ? お買い物ですか」

 この複合施設は旧財閥系である渡海グループが土地と建物全体のオーナーである。
 敷地には一流企業ばかりが入ったインテリジェントビルに、厳選されたハイブランドしか入っていないショッピングモール。

 そして芸能界情報番組でも『セレブが住みたい住宅ナンバーワン』と取り上げられる高級レジデンスで成り立っている。

『都会のオアシス』とか『一度は訪れたい施設』とか銘打った特集が毎日のようにメディアに組まれている、今一番ホットなところだ。
 さすが弁護士。
 お買い物する場所もハイソサエティな場所である。

 敷地内のレジデンスには億超えの噂があり、さすがに私の担当するクライアントにはいなかった。

「俺の家はここだ。空港に出やすいし、クライアントの会社に行きやすい」

「は?」

 意味がのみこめないうち、渡会さんが運転する車はヒルズの地下駐車場へと滑り込んだ。
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