月の砂漠でプロポーズ
ここ最近、TVを見る暇もなかったし、NETはクライアント宅への行き方検索しかしていなかった。

 世情に疎いことは自覚がある。
 渡会さん、実は政治家なのかな。
 それならわかる、かな。

 頭のなかにハテナマークを咲かせているうちに、私達は駐車場のエレベーターに乗りこんだ。
 渡会さんはカードを機械に読みこませると何桁かの暗証番号を打ち込んだ。

「レジデンスはそんなに大きくはない。五階建てで一番上は住民専用のバーとスポーツジムが入っている。どちらも使用料や飲食料が共益費に入っているから好きに使っていい」

「え」

 たまーに、ホテルの冷蔵庫内に入っている物全て無料サービスっていうところがある。
 当然、支払う宿泊料に内包されている訳で。

 住民限定のアクティビティが用意されているマンションだって、ままある。

 しかーし! 
ジムはともかく、BARでの飲食が無料とはどれだけの共益費を払っているのだろう。
 返す返すも恐ろしい建物に足を踏み入れてしまった。

 ……は! 
 あとでレジデンスの管理組合から『入場料及び拝観料』を請求されてしまうのではないだろうかろうか。
 あとは『サービス税』とか『地方税』とか?
 もしかして万単位?
 払えないからね!

 戦々恐々としている間に、エレベーターが渡会さんの自宅がある階にとまった。
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