たすけて!田中くん
「俺の大事なプリンを二度と食うなよ」
「独占欲ってそっち!? 私から奪ったときめきを返済して!」
「へぇ、ときめいたんだ? ふーん」
「っ、利子付きで返済して!」
先ほどよりも顔を真っ赤にしながら怒ってくる喜久本に、にやりと笑う。すると、俺の肩を勢い良く叩いてきた。
……痛い。こいつ力強すぎるんだよ。
「ほら、帰るよ」
喜久本の手をとって、歩き出すと少し遅れて俺の手を握り返してきた。
「プリンも大事だけど、同じくらい喜久本も大事だよ」
「プリンと同等なの!?」
久々に声をあげて笑うと、何故か喜久本の機嫌が直って嬉しそうに「その笑顔ずっと拝んでいたい」とか謎のことを言われた。
相変わらず変な思考回路をしているらしい。
「ね、握力どっちが強いかな」
「喜久本どのくらいあるの」
「んー、三十ちょいくらい?」
「絶対本気で握るなよ」
やらないよーと笑う喜久本を警戒しつつ、握りしめた手を離さないようにふたりでゆっくりと並木道を歩いた。