皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
「おい、呼び捨てにするな」とマーティンが言う。

 ちょっとめんどくさい、とエドガーは思った。

「ミレーヌ嬢」

 次は敬称をつけてその名を呼ぶ。呼ばれたミレーヌは「はい」と返事をして、兄の隣に並ぶ。

「あらためてお礼を言う。ありがとう」

「いいえ、どういたしまして。騎士として当たり前のことをしただけです。ちょっと私の初めてでしたので、自信がありませんでしたが」

 そこで初めてミレーヌは、第三騎士隊隊長であるエドガーの顔を見た。

 ――ミレーヌのタイプでしょ。

 ふふっと、いたずらな天の声が言う。その通り。目の前には理想の顔が。

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