皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
5.不思議な少女
 ここで少し、ミレーヌの家族について話をしよう。
 シラク公爵と公爵夫人は野獣と美女と言われている夫婦であった。それは今でも継続中。
 騎士団の団長である公爵は、それはもう、身体は大きく、いかつく、顔のもじゃもじゃ髭がさらに貫録をつけていた。

 本人が言うには、団長らしい顔になりたいから、もじゃもじゃ髭にしたらしい。でもやっぱり、顔から溢れる優しさはごまかしきれない、とミレーヌは思う。
 そもそも団長らしい顔ってなんだろう、と思っている。

 シラク公爵は、動物に例えると、可愛く言えば、熊、ごつく言えば、ゴリラ。公爵夫人は白魔導士なだけあって、可憐で儚い、ように見える。動物で言えば、猫? ウサギ?
 こんなに正反対の二人がなぜ一緒になったかというと。
 父親が言うには、母の方が父親に惚れたらしい。
 母親が言うには、父の優しさに惚れたらしい。
 はいはい、ごちそうさま、と二人ののろけ話を聞くたびにミレーヌは思っている。だけど、このような相手に出会うことができた両親が羨ましいと、心のどこかでは思っていた。

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