皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 少し歩くと、髪飾りを売っている露店があった。そこでミレーヌが立ち止まる。

「髪飾りが欲しいのか?」
 エドガーは問う。

「いえ、はい、あの。訓練のときに髪を縛る紐が欲しいなと思いまして」
 ミレーヌが答える。

「では、私からそれを贈らせてほしい」

 ――ミレーヌ、断ってはダメよ
 今まで静かだった天の声。

「ありがとうございます」自然とミレーヌの口からその言葉が出た。

 エドガーと二人で髪を縛るための組紐を選ぶ。訓練用なので、シンプルなものが良いだろう。赤八割と黒二割の飾り気の無い組紐を選んだ。

< 58 / 125 >

この作品をシェア

pagetop