悪役令嬢は騎士の腕の中で啼く――婚約破棄したら、爵位目当ての騎士様に求婚されました――




 夜更け――。

(眠ったら朝が来るから大丈夫だって、思ったのに……緊張して、全然眠れない……!)

 隣に眠るシルヴァの精悍な顔立ちに目が奪われてしまう。

(小さい頃は、綺麗な男の子のイメージが強かったのに……)

 長身痩躯、鍛え抜かれた引き締まった身体――。

 つい、二の腕の筋肉に触れてしまう。

(硬い……って、私ったら、何を……)

 一人で勝手に赤面して、ぎゅっと目を瞑り、シルヴァに背を向けて眠りなおした。

(とにかく、羊を数えて眠らなきゃ……羊が一匹、羊が二匹……)

 そうやって羊を数えていると――。

「リモーネ……」

「え……?」

 突然後ろから、シルヴァから抱きしめられてしまった。

 男の人の――騎士として鍛えられた逞しい腕は、女の私が引きはがそうと思ってもなかなか出来ない。

「シルヴァ、お兄……んっ……!」

 突然、首筋に彼の柔らかい唇が触れる。
 今までに感じたことのない快感が、全身にびりびりと走り、変な声が漏れ出てしまった。

「あっ……シルヴァ……ひゃっん……あっ……」

「リモーネ……」

 彼の大きな手に、胸の膨らみを掴まれたかと思うと、ゆっくりと形を変えられる。

「ふあっ……あっ……だ、だめっ……」

 初めて感じる快楽に抗いながら、眠たい頭で必死に考える。
 彼の手の動きは止まない。

(偽装結婚なんじゃ……だけど、なんだかシルヴァお兄ちゃんの様子が変なような……)

「ひゃっ……!」

 就寝用に薄手のシュミーズドレスに着替えていたのが災いしたのか――。
 布越しにも分かる、硬くなってしまった先端を、彼の長い指につままれ、くにくにと動かされる。
 同時に首から背にかけてを、シルヴァの舌が這い始め、ぞくぞくと全身が震えた。

「あ……ん……あっ……あ――シルヴァっ……あっ……」

 だが、彼女が呼びかけても反応がない。

(まさか……)

 ひとしきり乳首をこりこりと動かされた後、彼の大きな手が彼女のドレスの裾から伸びると、太腿を撫で始める。

「あっ……お兄……は、あっ、あ……」

(寝ぼけてる……!?)

 そう言われると、子どもの頃、シルヴァがよく寝ぼけていたなと思い出す。

(そして眠ると、なかなか起きない……)

 そのまま、彼の手がショーツの中に侵入した。

「あっ……!」

 お風呂の時に洗ったりするときぐらいしか触らない割れ目に、指が伸びる。

「あっ、んん、だ、だめっ……ああっ……!」

 異様に触れられると、身体が敏感に反応してしまう部分を、彼の指がくりくりといじりはじめる。

「は……あっ……んんっ……だ、だめ、そこ、なんだか、変で……」

 とがった先を執拗なほどに責め立てられていると、だんだん頭がぼんやりしてくる。
 彼の指が、どこかから出てくる液で濡れて行っていくのが分かって、恥ずかしくて仕方がなかった。
 ぐちゅ、ぐちゅと下着の中から音が聴こえてきて、何がなんだか分からない。
 次第に呼吸も上がっていく。

「あ、あ、だ、だめ……いやっ……ああっ……!」

 今までに感じたことのない快感が、全身を突き抜けた。
 全身がびくびくと震え、どこか走ってきたかのように荒い呼吸を繰り返す。

「い、今のは……はあ……なあに……」

 だけど、眠っているシルヴァは答えてはくれなかった。

 指の動きが止んだので、必死に彼を起こそうとしたのだが――。

「――!?」

 腰のあたりに、何か硬いものが触れる。
 それが、彼の器官だと理解するのに少しだけ時間がかかった。

「リモーネ……」


(シルヴァお兄ちゃん、全然目を覚ましてくれない……このまま、私はどうなっちゃうの――!?)


 偽装結婚初日に、事件は勃発したのだった――。



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