君との恋の物語-Blue Ribbon-

彼氏

「それで、すっかり仲直りできたのね?」

めぐが私のところに相談に来たのは、つい3日前のこと。

あの時はすごく思い詰めていためぐも、今ではすっきりとした顔をしていた。

『うん、この間はごめんね。心配かけちゃって』

私は全然気にしてなかったんだけど、どうしてもお礼がしたいって誘われたのでご飯にきている。

「んん、全然!仲直りできたなら、よかったじゃん!」

めぐは、照れたようにはにかんでいる。

よかった。すっごい幸せそう。

『うん、結ちゃんに言われた通り、ちゃんと会って話したの。そしたら、賢治君も察してくれてて。』

うんうん。

『この間はごめんって、先に謝られちゃって。いや、私もごめんってなったら、なんか可笑しくなちゃって、笑い合えたの。』

なんとまぁ、幸せな話。めぐの表情からも、幸せな感じがすごく伝わってきた。

『でも、笑って終わりって訳にはいかないから、ちゃんと話したんだ。私が、何を考えて断ったか、とか。その…これからのこと、とか』

「うん。大事なことだもんね。」

でもその感じだと…?

『そしたら、賢治君も、あの時はそんなつもりはなかったし、今すぐどうこうは思ってないって言ってくれたの。』

「そっか。誠実な人なんだね、高橋君って。」

赤面して俯くめぐ。

んー?この感じは??w

『うん、本当、そう思う。だから、なんて言うか…』

ほう?

『この人となら…』

あらまぁ…

『いいかもって』

//////


あぁ、ありがとう!ご馳走様!おめでとう!あぁもう聞いてるこっちが恥ずかしい!w

すっごい幸せオーラに私の方が悶絶した。w

『なんか、ごめんねっ。こんな話…』

いやいやいやいや

「いやいや、いいの!全然!とにかく2人が幸せならよかったよ!これからも仲良くねっ」

ウブだわ。とっても。






と言うことで次の日、心配事が1つ減った私は、今日からはより集中できそうだと思って張り切っていた。

今日は授業も少ないし、放課後に練習するための部屋も予約出来ている。

閉館まで練習すると小腹が空くので、自分へのご褒美に個包装のチョコレートも買ってある。

恒星とは最近会えてないけど、来週はご飯に行く約束もしているし、それまでは頑張ろう。



今日は、Aブラスの曲だけじゃなく試験曲の候補になっているソロの曲の譜読みもした。

候補は2曲。どちらもコンチェルトで、有名な曲。

悩ましいけど、どちらにするかはほぼ決まっていた。

理由は、簡単に言ってしまえば難易度。

1曲はかなり技術的に難しいので、私自身がもっと成長してから取り組みたいと思っている。

だからって、もう1曲の方も決して簡単ではないけど。

伴奏者はもう決まっているし、今から取り組めばかなり良い状態で持っていけるでしょう。

まぁでも、どちらの曲ももう少し先まで譜読みしてみようかな。


前から思ってたけど、やっぱりソロの曲ってすごいエネルギーを使うわね。

当たり前だけど、基本的に吹奏楽の楽譜よりも情報量は多いし、オケや吹奏楽を1人で相手にする訳だから。

かなりのエネルギーがいるわ。

もちろん、先日先生に教えていただいた、【いつでもソロを吹くクオリティで】

というのは念頭にあるけど、やっぱり全然違う。

よし。ある程度譜読みしたけど、やっぱり今回はこの曲で行こう。

1曲に集中して磨いていきたいわ。


ということで、そこからはAブラスの曲の練習。

最後の楽章の行進曲は、それなりにテンポも速いし、いくつか難しい箇所もある。

私、指は回る方だけど、より音楽的に聴かせるにはどうしたらいいかは常に考えている。

1st内で上下に分かれているところは藤原先輩と一緒にバランスを取る練習もしないと。

いいわ。とっても充実してる。まだ時間はあるし、今日は1人でできる練習をじっくりやろ。




今日も時間いっぱいまで練習して、帰る頃にはへとへとになっていた。

あぁ、今日は結構疲れた。

帰ってゆっくりお風呂に入ろう。

なんて思いながら、校内のエレベーターを降りると、ちょっと先の方に見覚えのある後ろ姿が。

あれは確か、鈴木先輩…?

やっぱり上手な人は毎日遅くまで残ってるのね。

それにしても…すごいオーラ。

後ろ姿でもわかる。美人オーラ…芸能人かと思うくらい。

あんなに美人だから、きっと彼氏もいるでしょうけど、恒星と同じ楽器にあんなに美人がいたら、ちょっと気になるわね。

もちろん、恒星に限ってそんな心配はいらないだろうけど。

んーなんか複雑…。

なんとなく追いついてしまうのも気まずいので、少しの間そこに立っていたら、当の恒星がエレベーターから降りてきた。

『あれ?結?』

なんとまぁ、タイミングがよろしいことで。w

「あら、お疲れ様。今、帰り?」

偶然だけど、これはありがたい。

『うん、結も?』

「うん!」

ってことで、一緒に学校を出た。

時間も時間だし、もう誰もいないだろうと思って手を繋いで歩いた。

安心する。

『結?なんかあったのか?』

え?

「ん?なにが?」

『いや、なんとなく。』

んーこれは、言わないほうがいいわね。

「ん、ちょっと疲れてただけ。恒星は?調子はどう?」

あんまり納得してなさそうだけど、それ以上はなにも聞かないでくれた。

ありがと。

『うん、いい感じだよ!そろそろ試験曲も練習しようと思ってるくらいかな。』

「そっか。私も今日練習始めたところよ!」

『そっか。なんかいいな』

ん?

「なにが?」

『大学生活が。充実してるなって。』

「そうね。私に関しては、半分は…」

『結のおかげ』
「恒星のおかげ」

っ!

2人でよく笑った。

ありがとう。恒星。

『そうだ、Aブラスが終わったら、泊まりで遊びに行かないか?』

うん!

「いいよ!そのタイミング逃したら、試験まで忙しいもんね!」


それからの帰り道は、Aブラス後の小旅行のことで持ちきりになった。

私は、改めて恒星が好きだと実感した。

だから、鈴木先輩のことは言わなくてよかったと思ってる。

だって、それを口にするってことは、恒星を疑ってるってことになってしまうから。

恒星は多分、女の子が漠然と感じる【不安】があるってことをわかってるんだと思う。

それに、その不安を取り除けるのは男の人だけだってことも。

だからいつも、ベストなタイミングで安心させてくれるんだ。

本当、出来た彼氏だわ。

いつもありがと。

これからも、ずっと隣にいてね。
< 14 / 18 >

この作品をシェア

pagetop