辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2
 物理的な距離に歯がゆさを感じずにはいられない。

 手紙を眺めているとトン、トン、トンとドアをノックする音がして、セシリオはまた文官が来たのだと思い入室の許可をだそうとした。しかし、声を出す前にドアが開いてモーリスが顔を出した。セシリオと目が合うと口の端を上げる。

「準備は万端か?」
「だいたいな」

 後は先ほど今夜までに見ると約束した軍備の配備計画案を確認し、モーリスに留守中の引き継ぎをするだけだ。

「そりゃ、よかった」と言うと、モーリスは執務室のソファーにドサリと腰を下ろす。

「ちょうどデニーリ地区におくった治安維持隊からの報告が届いた。セシリオがプランシェに行くついでにアルカン長官のところに寄るって言ってたから、報告しておこうと思ってな」
「ああ、それは助かる」

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