彩られてゆく世界に君とふたり
夢見る若菜
 僕は、花が好きだ。自分が、若菜だなんて

可愛らしい名前だからだろうか。本当は、こ

の名前も好きだ。だけど、「若菜」って呼ば

れる度に、嫌にもなる。女の子みたいって、

笑われるのが怖いから。真正面から言ってく

る人はいなくても、何となく、馬鹿にされて

いるのはわかるから。

         *

 僕はこのクラスの生き物係で、主に植物を

育てている。今、僕が水をあげているのはク

リスマスローズという大人っぽい花。植物の

ことを考えている時は不思議と、強い僕でい

られる。周りの目なんか気にしない。だけど

時々夢を見る。集団の中に混じって大声で笑

う僕の、あり得ない夢を。もしかすると、そ

ういう明るい自分にほんの少しだけ、憧れて

いるのかもしれない。
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