離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 クックッっと、肩を震わせている蓮斗さんを目を細めて、ムムッと睨む。

(普段は無の極地なのに、意外と笑い上戸ですね…… )

「シエナ、これにサインを」

 スッと婚約届を出して、トントンッと、《妻になる人》の欄を指差す。

「つ、妻……?! 」

 急に現実味を帯びて、結婚と言う意味が、心に重くのしかかる。

 よく見ると、蓮斗さんの欄と保証人の欄は既に、記入済みだ。

 流石、仕事が早いな、と感心する。

 

 手が震えて、サインを戸惑っている私の手を、ギュッっと、蓮斗さんが両手で包んみ込んだ。

「シエナ、お前を生涯、世界で二番目に幸せにしてやる。 だから俺と結婚してくれ」

「は、はい…… って、え?! 二番目?! 」

 な、何故に、二番目?!

 ??でフリーズしている私に、蓮斗さんは、目を三日月型に細めると、フッと優しい顔になる。

「一番に幸せなのは、俺だからだ。 結婚なんて興味のなかった俺が、シエナに出逢った。自分の意思で流されないお前に惚れた。 そんな女と一緒にいれる、この俺が、世界で一番、幸せ者だ! 」

 両手で包んだ私の手に、チュッっと、キスをして、

「まあ、今はかなり流されてるけどな、そのまま流されておけ」

 
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