離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 シン……ッと、静まり返った、冷たい空気の部屋にはチュッ、チュッと、絡み合う二人の音だけが響いている。

「…… シエナ…… 」

 私に覆い被さり、耳元から髪を掬い上げる。

 蓮斗さんの気持ちが私にないのに、このまま抱かれても良いのか……、戸惑いと不安で、身体と心が縮こまり、緊張で、小刻みに震えてきた。

 蓮斗さんが、私の顔を覗き込み、汗で額にはりついた髪を、優しく梳く。

 唇が鎖骨から胸へ、そしてお腹からお臍へと下りていく。

 右手で、私の太腿から、敏感な部分に触れて、指先でそこをなぞる。


 「シエナ、…… 大丈夫か? 呼吸が浅くなってる。 ゆっくり吸って、俺だけに意識を集中しろ」

「…… ん」

 いつもなら、解されて濡れる筈の身体は、心の中を感じ取って、潤わない。

「なあ……、 もうこんな事、やめにしないか? 」

 蓮斗さんは眉毛を寄せ、切なく、苦しみを滲ませた瞳で私を見つめる。

「……っ、 そんな…… 」

「シエナだって、こんな事辛いだろ? 」

 やっと、自分の気持ちを言えたのに…… 、ずっと恐れていた言葉を言われ、イヤイヤと何度も首を振る私に、眉間の皺を更に深くして、整った顔を歪ませる。

「だが…… 」

「お願い…… やめないで…… 」

 複雑な想いが湧きあがってきて、瞳に涙が溜まる。

 蓮斗さんはゆっくりと挿ってくるが、引き攣れたような痛みに、くぐもった声が漏れ、思わず唇を噛む。

「…… んっ…… くっ…… 」

「唇を噛むな」


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