女の恋愛図鑑
1章 ループ 佐知
「どこの誰だか分からないんだってば。」

またあたしのいつものが始まってしまった。
いつものと言っても2年以上音沙汰無かった。その反動で今回はやばいかもしれない。

あたし、いつの間にか恋してなかった。この間行った縁結びの神社で買った御守りを肌身離さず持ってたおかげかもしれない。
忘れてたはずの気持ちが取り戻せた気がして、何だか無性に嬉しかった。

あたし、恋多き乙女のまんまじゃん。良かった。
「佐知のそれ、久しぶりだねぇ。今回はどんな人なの。」
大学に入ってずっと一緒にいる友人の美香があきれ半分、興味半分であたしに聞いた。

あたしは今、大学に入ってから出来た彼氏のたーくんと交際2年と4ヶ月になろうとしている。
それまで色んな人と付き合ったけど、みんな3ヶ月、1番早くて1ヶ月とか、付き合ってるって言わねーって突っ込まれるくらいの長さしか彼氏と続いた試しが無かった。
だから、今付き合ってるたーくんとこんなに続いてる状況がほんと奇跡だった。

たーくんは歳が3つ上で社会人。出合った時はあたしが19でたーくんが22になる年だった。
バイトが一緒で、特に絡みも無かったけど、たーくんが就職決まったから誰か飲みに行きましょうって従業員用の連絡ノートにアドレスを書いてあったのを見て、あたしがおめでとうってメールしたのが事の始まりだった。
初めて飲みに行った夜、「そういうこと」になった。

当初あたしは歳が2つ上の彼氏と付き合ってて、たーくんもそれはよく知ってた。

けど、たーくんはあたしを抱いた。性欲には勝てなかったらしい。
たーくんは嫉妬深い男だ。バイトが一緒の頃は、男の従業員と喋るだけで、バイト終わりにねちねち嫌味を言われた。

その度に別れたいと言われた。
けど、本当に別れたいから言ってるんじゃないって事は2回目くらいで気が付いた。
別れるってダダこねて、必死で引き止める相手の反応を充分味わって、自分への愛を再確認したいんだって。たまに女でそういうタイプがいてるっていうのは聞いた事あったけど、うーん…変なの。

その他にも、お金にビミョーに執着心があったり、最初はたーくん自身が浮気相手だった事もあり、今だにあたしへの信頼感は手堅いくらい無い。

たーくんとの事はまだまだ色々あるけど、今はもうこの辺でいいや。
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