女の恋愛図鑑
あたしはもう、呼び出したり、対話といった手段を選ばなかった。あたしはそんな、器のでかい人間じゃなかった。


それからきったんと喋ろうとしなかった。


すぐにその様子に気付いたようだけど、きったんは挽回しようとはしてこなかった。

気付いてないと、まだ思っているんだろうか。
無意識の域で腹の探り合いをしあって、あたしにはもう信頼とかそんな感情は微塵も湧いたりしなかった。


合宿も終り、3日経って、きったんから電話が来た。


顔見ずに、あたしたちは終わろうとしている。それを知らせているような、ケータイの着信音。

「はい」
「あ、俺。」
「どうしたの。」
「元気?」

きったんは単刀直入には本題に触れなかった。
あたしはそのせいで妙に心がざわつくのが分かった。終わるなら、早く終わって欲しかった。
「あたし鼻がいいのね…」
「ん?そうなんだ。」
「もう次はないって言ってよね。意味、分かるよね?」

何か言葉を挟んで来る前に一息で言い切ってしまいたかった。
「タバコが嫌いだから、吸うきったんを嫌いになったんじゃないよ。出会った時から、吸うのは知ってたし。」「どうしても破っちゃいけない約束っていうの、あると思うの。」
言ってしまおう。
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