女の恋愛図鑑

身代わり君

-----------

もうすぐ、忙しい夏が始まる。

あたしの高校は進学校で、毎年みんな有名な大学に行く子が多くて、猛烈な追い込みというものが、3年生になる前の春休みから兆しを見せ始める。


塾に通い出したり、春で部活を引退したり、そろそろと受験という小波が、まだ17、18という若い心に近付いて来る。

けれどこの学校の生徒は近付いてくる波を、受験生の鬼門と呼ばれる夏に一旦跳ね除けてしまう。


9月の終わりに文化祭があるからだ。3年生はクラスごとに、劇をやる。

それもめちゃくちゃ手が込んでいて、3年生の夏休みは毎日学校でその準備や練習に捧げられ、休みらしい休みはない。


それを熱心にやり遂げる生徒のひたむきさ、進学校であっても行事ごとに熱い文武両道な所が、この学校が人気な理由だった。

それを知っていて入ってくるみんなは、夏に勉強が多少出来なくても、文句一つ言わない。

まだ7月だというのに、何だか慌ただしい。何するだの、誰がどの役するだのは、もう6月に決まっているというのに。


あたしの心は今、何かで埋めなければ、その亀裂から全てが終わってしまうんじゃないかと思うくらい、痛んでる。


< 21 / 55 >

この作品をシェア

pagetop