女の恋愛図鑑
あ、こうちゃん…
あたし今失恋してきたの。

なんてちゃんと言えるはずもなく、一気にタガが外れたあたしはこうちゃんの胸に飛び込んだ。

「うわーん!こうちゃん!」

いきなり飛び付いて訳も解らずあたしが泣きじゃくるもんだから、こうちゃんは面食らってた。

けれど、ちょっと悲しそうな、微笑むような曖昧な表情であたしの頭を撫でる。


理由も聞かず、あたしが泣きやむまで。

あたしはこうちゃんの優しさに遠慮なしで甘える事が出来る。

涙も鼻水もズビズビで、目も鼻も真っ赤で、もう女の子でもないあたしにいつまでも付き合ってくれた。

その時も今もこうちゃんに対する想いは恋でもなんでもないけど、あの時あの場所で会わなかったら、あたしの心は粉々になって戻ることは無かっただろう。

涙も出しきって出なくなった時には、あたしの心は汚い物が一旦は全部洗い流されたようだった。

「ごめんねこうちゃん…」
「全然いいよ!そんな時もあるよな~。」

と言って濡れたあたしの目の回りを手で拭ってくれる。

ありがとう、ありがとう。感謝しきれない。

それから1ヶ月後、美紀と雄志は付き合いだす。
しばらくの間、季節が春になってもあたしの心は雪が降っていた。
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