女の恋愛図鑑
あっ、とその時気付いた。
その瞬間堪らなく彼を愛しく思って、ぎゅっと抱き締めてしまいたい。

嬉しいことに彼は女嫌いでもゲイでもない。

ただ、彼は恥ずかしかったのだ。

それは彼の染まった頬が伝えてくれた。

さて、これからどうしようか。
極度の照れ屋な彼を射止めるには。


それからあたしは際限ない。
彼に挨拶はもちろん、とことん話し掛けた。

その様子は他人から見ればイレギュラーな光景だった。
禁忌にふれたような、少しおののく周囲の反応。

あたしはストーカーじみていたかもしれない。けれど構ってはいられない。

あたしは気苦労も祟ってどんどん痩せていった。
それと共に女としての自信のような物も得ていく気がした。

毎日のあたしの習慣は絶えることなく、実行される。
少し最初より彼の驚きは無くなっていたが、相変わらずの緊張は持っているようだ。

周りに良く聞かれるようになる。
「長野くんに良く喋りかけられるね、何話してるの?」

女の子の注目は、実行されなくとも常に綺麗な彼に注がれていたのは間違いがなかった。

人は先んじて新たな事に挑戦するのは怖い。様子を見たい。
そんな気持ちが露わだった。

あたしは軽くフェイクをかます。
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