純恋歌
「え!?彼氏出来たの?」

明菜に夏休み明けに学校で報告した。

「しーっ!しーっ!」

周りをふと見たら聞こえてないフリをしてるがどいつもこいつも耳がダンボになっているのがわかる。

「翔君って人?」

「うん」

「えー!良かったじゃん!デートしたの?」

「映画は見にいったよ、もののけ姫を」

「えー!良いじゃん!あれ人気だよね!」

あれ?明菜が男の子にもののけ姫をデートに誘われたと聞いたら

「いやいや、女の子とのデートにもののけ姫って!もののけって!」

と、爆笑なのに。

普通の人は引っかからないんだと思った。

私と母の笑いの感性がおかしいんだなと改めて痛感した。

もののけ姫が笑いのツボとならないなら今後は

「初デートは初恋の人と映画デートで見た映画はジブリ!」

そう言ったら女子力高くて可愛い気がするからそうしよと思った。

「じゃんけんぽん、亜依子でしょ!なぁ、あ、あ、亜依子でしょは彼氏出来たのか?」

このクラスのいじめっ子の栗原君が顔が少し引き攣った表情で聞いてきた。

「え、うん。恥ずかしいからみんなに言わないでね」

私が無表情でそう言うと、普段なら

「うわ!亜依子でしょ!に彼氏出来たんだってー!物好きな彼氏の写真とか見せろよー!」

そんな風に騒ぎ散らしてもおかしくないのに

「あ、うん」

明らかに肩を落として自分の席に戻っていった。

「多分、栗原君は亜依子の事好きだったんじゃないかな?」

その反応見て自意識過剰と言われそうだが確かにそうだろうなと思った。

後、私の事が好きならばイジってくんなよって思った。

夏休み本当は翔君は私と色々遊びたかったと思う。

けど前にも言ったけど私も習い事以外にも家の事で忙しく彼氏に時間を使う訳にはいかず。

けれどそれでも完全に放ったらかしにはしてなく、小学生の自分なりには必死に考えて相手をしてたんだけど、いつしか連絡を段々と取らなくなり、合唱団で会ってもどこかよそよそしくなっていった。
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