婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「確かにあの頃はそうかもしれないわね。フローラちゃんは十五才でしょう? ブルーバーグ侯爵がそう思うのは無理もないかもしれませんね」

「でも、その結果が、あれでは……」

 エドガーの所業を思い出してしまったわ。ムカムカしてきた。
 沸々と煮えたぎったマグマのような怒りが湧いてくる。あいつのせいでどれだけフローラが傷ついたことか、今すぐにでも思い知らせてやりたいくらいだわ。

 怒りに震えていると

「ねっ。ディアナ、どうしたの? そんな鬼のような形相をして……怖いわよ」

 アンジェラがビクビクと怯えたようにわたしの顔を窺ってた。若干、距離も取ってるわ。
 そんなに怖かったかしら。

「ごめんなさい。ちょっと、いやなことを思い出しちゃっただけよ」

 そうよね。
 ここは≪フローラとレイニーの恋を見守る会≫だったわ。
 本来の目的を忘れるところでした。

「そうだわ。ローズ様。では、過去は過去として聞きますけど、誰の王子妃にするつもりだったんですか?」

 王子妃にというからには誰か想定する王子がいたのよね。
 王子は三人だけど。王太子のエドワードはアンジェラと結婚していたから除外されるとして、残りは二人ね。

「あっ。わたくしも気になりますわ」

 アンジェラが小さく手を上げた。一応興味はあるのね。わたしだけでなくてよかったわ。

 ローズ様はわたしたちの顔を順に見つめてしばらくの沈黙の後、名前を口にした。

「……レイニーよ」
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