婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「そこで、王家としてフローラちゃんをレイニーの王子妃として迎えたい旨を話したわ。ただし二人の気持ちが最優先で、特にフローラちゃんの気持ちを大事にするから強制的に婚約させることはないと伝えたわ」

 そこまで言うとローズ様はチーズケーキを口にした。
 わたしは紅茶を飲んで次の言葉をジッと待った。
 シンとなった室内が緊張感を誘って身が引き締まる。アンジェラも真剣な顔で姿勢を正した。

「強制しない代わりに、王宮へ招くこともあるからそれは承知してほしいということと、もしうまくいかなくても咎めたりすることはないということ。わたくしたちが望んでいるのはフローラちゃんが幸せになることだけだと言わせてもらったわ」

「……」

 ローズ様の言葉に胸にこみ上げてきたものがあった。
 泣きそうになるのを必死にこらえたわ。

 ローズ様とアンジェラには婚約破棄までの経緯を話してある。
 エドガーのこと、テンネル侯爵家での仕事ぶりもわたしが知っている限りは伝えたわ。
 ヘンリーおじさまやエドワードの耳にも入っているかもしれないわね。

 だからこそ、フローラには幸せな結婚をしてほしい。
 できることなら政略で結ばれるのではなく、愛し愛された幸せな恋愛もしてほしい。
 それがわたしたち三人の願いなのよ。

 
 フローラの幸せな結婚。

 それを実現するべくわたしたちはこの日計画を練ったのだった。
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