婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「室内履きの履き心地が良すぎて、つい浮かれてしまいました。はしたない真似をしてすみません」

「いいえ、お気になさることはありませんよ。レイニー殿下もきっとかわいいと思いこそすれ、お咎めなどなさらないでしょうから」

 なぜここでレイ様が出てくるのかわかりませんが、エルザはまたクスクスと笑い出しました。やっぱり私のふるまいがおかしかったのでしょうか? そばで控えている三人の侍女たちも笑っているような気がします。だって肩が震えていますもの。穴があったら入りたいです。
 
「フローラ様が履き心地が良いとおっしゃるのはわかります。わたしも自宅で履いていますから」

 なんですって! 笑いがおさまったエルザから衝撃的な事実が発覚しました。

「「「わたしもです」」」

 エルザだけではなくほかの侍女たちからも声が上がりました。びっくりです。もしかしてレイ様の宮では流行っているのでしょうか?  

「まあ、そうなんですか? もうすでに経験者がいらっしゃるとは、うらやましいですわ」

 自邸にいてもヒールのある靴を履いていますから足が疲れるのですよね。ですから足のマッサージは欠かせないのです。外出用には難しいでしょうけれど、もう少し靴底が厚ければ室内であればどこでも使えそうです。そうすれば足の負担も軽減されるのではないでしょうか。
 俄然ほしくなりました。数カ月は履いたようにしっくりと馴染んでいて手放せなくなりそうです。
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