婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「おうっ……えっ、ひええっ」

 レイ様は変な声をあげてソファの背に後ずさるようにしてのけぞりました。とっさの行動について行けず額から手がはずれてしまいました。びっくりしていらっしゃるのか怯えていらっしゃるのか、判断はつきかねますが、顔を見ると頬も赤くなってるような気がします。大丈夫でしょうか?

「耳が赤かったので、熱があるかと思って額に触ったのですが、おいやでしたでしょうか?」 

「熱?!……ねっ、熱か。いや、すまない。突然で驚いただけだ」

 そうでした。他人に体を触られたらびっくりしますよね。つい、弟のような感覚で接してしまいました。配慮が足りませんでした。

「断りもなく不躾な行為をしてしまい申し訳ありません。それでは、体温計で計った方が」

「いや、体温計はいらない。ローラの手で確かめてほしい」

 私が言い終わらないうちにレイ様の声が聞こえました。そんなに急がなくてもいいと思いますが、具合が悪ければそうも言ってられませんものね。
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