素直になれない…
翌日、キッチンから漂うお味噌汁の香りで目が覚めた。

そうか、私は雄平の家に泊ったんだ。
こうして一緒に朝を迎えるのは2度目で、あの初めての日以来。

「おはよう。気分大丈夫か?」
「うん。平気」

もちろん万全ってわけではないけれど、妊娠中の妊婦なんてこんなものでしょう。

「朝飯用意したから、食べれそうなら食べて」
「ありがとう」

雄平が料理をする人だって初めて知った。
いつもは彼女が使っているのかもしれないキッチンはすごく綺麗で、男性の家とは思えないほどの調理道具が並んでいる。

「すごいね、料理するの?」
「ああ、あいつの趣味だ」

あいつ。
それは、噂の彼女さん。

「ご飯もパンもあるけれど?」
「ご飯とお味噌汁をいただきます」

妊娠3ヶ月。
本来なら悪阻の出る時期だけれど、私は比較的平気な体質らしくて少し食欲が落ちるくらいで大きな変化がない。
おかげで母さんにも職場にも妊娠を知られずに今日まで来た。

「今日、奏多の家に行くんだろ?」
「うん、その予定」

芽衣ちゃんが出産したのは2か月前。
今日は赤ちゃんのお祝いにお邪魔する約束になっている。
それにしばらく東京を離れるつもりだから、お別れも言いたいし。

「一緒に行くよ」
「何で?」

まさかそんなことを言われるとは思っていなくて、びっくりした。

「俺もまだお祝いをしていないし」
「それは・・・」
別の日でもいいと思うけれど。

「じゃあ、食べたら出かけるぞ」
「本気?」
「ああ」

どうしたんだろう、今日の雄平はおかしい。
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