初恋は海に還らない




「都、おはよう」



 今日、数時間前に私の自殺を邪魔した男、洸が、居間の真ん中にあるちゃぶ台に並べられた朝食を、祖父と共に我が物顔で食べている。


 そして、味噌汁を啜りながら私の名前を呼び片手を上げた。なんなんだ、この男は。


 洸は甚平ではなくカットソーにデニムというファッションで、昨日の甚平は寝巻きだったんだな、と半分パニックになった脳みそで考える。


 というより、もしかして洸は私が自殺をしようとしていたことを祖父母に伝えに来たのかもしれない。なんて余計なことを。


 自分がパジャマ姿なことも忘れ、警戒心丸出しで洸に冷たい視線を送っていると、台所から厚焼き卵をを運んできた祖母が私に気付き明るく笑う。



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