初恋は海に還らない
「……小さなきっかけだったんです。友達だった子のSNSに自分の写真を載せないで欲しいって頼んだら……ノリが悪いって、気付いたらクラス中から無視されるようになってて」
「…………」
「親にも心配掛けるし、誰にも相談出来なくて……二年生になっても物が無くなったり、空気扱いされたり状況は変わらなくて」
「……へぇ」
「誰も助けてくれないと分かってからは、とにかく目立たないように過ごしました。陰口を言われても、物が無くなっても反応してやらない。それが精一杯の抵抗だったんです」
小学生の男子達が、笑いながら私達の横を走り抜け、海に入っていく様子に私は顔を上げる。そして話を続けた。
「そんな中、小説だけはどんな時でも私の味方でした」
「味方?」
「大好きな本を読んでいれば、辛い現実を忘れられたんです」
「……そうか」
「けど、担任からは、本ばかり読んで協調性のない私が悪く見えるみたいで……なんだか私、馬鹿みたいで、疲れてしまって。その発言をされて以降、学校には行ってません」
楽しそうに遊ぶ子供達、見守る大人、砂浜を散歩する老夫婦、その全てが幸せそうで、私だけが存在を許されていないような、酷い孤独感に襲われる。
そんな気持ちのまま、言葉を繋いだ。
「私が死んだら、担任もクラスメイト達も、自分のした事を後悔するかもって思って」