初恋は海に還らない



 洸が言っていた、理玖はいい奴だからという言葉を実感し、私はこくこくと何度も頷いた。



「……っつーか、洸って初対面からあんな感じだった?」
「あんな感じ……? うん、比較的」
「洸、ついこの前まで全然笑わなかったんだよ。だから、今日会って前の洸に戻ったみたいで驚いた」
「えっ? 全然笑わなかったって……なんで?」
「……洸が話してないなら言えない。けど、周りが触れられないくらい、ここ数年ピリピリしてた」



 周りが触れられないくらい……?そんな洸を想像できない。


 けど、出会ったあの日、夜の堤防。洸の表情を思い出す。


 確かにあの時の洸は、表情が抜け落ちたように冷たく感じたんだ。




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