初恋は海に還らない



「理玖とどうだった? あいつスカしてるけど悪い奴じゃねーだろ」
「いい人だね。話してて楽しかったよ。だけどなんで洸も理玖も海に人のこと投げ入れるの? そういう呪いにでも掛かってるの?」
「なんかお約束なんだよ。仲良くなりたかったらとりあえず海に投げる」
「こわ……」



 今日、かき氷を食べ終え砂浜に走って行ってしまった理玖を追ったら、何故か揉み合いになり海に投げられた。


 そこからヒートアップしてお互いびしょびしょになり、そのまま洸の店に戻ったら大笑いされた。


 けれど、確かに理玖との距離は縮まった気がするから、この海辺の街特有のコミュニケーションはそれなりに機能しているんだろう。


 夜空を見るふりをして、洸の横顔を盗み見る。少しだけかさついた薄い唇や、きりりとした鼻筋、穴だらけの耳。
 太い首に主張する男らしい喉仏。洸は、私とは性別も年齢も違う、大人の男だ。その事実にどうしようもなく胸が鳴る。



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