君の隣だから、笑顔。〜あまのじゃく男子は、いつもイジワル〜

入学式が終わって、クラスの担任の先生に連れられ、私たちは教室へと歩き出した。
先生は、真面目そうな四角いメガネの男の人だった。理科の先生らしい。
厳しそうだなぁと思いながら、私は先生を見つめた。そしたらバッチリ目が合って、先生のキリッとしたつり目が怖かった。

「では、みんな自分の名前が書いてある席に座って」

「はーい」

思った通り、席は1列5席。
私の席は、1番窓際の後ろの席。校舎裏の庭園がよく見えて、当たり! 正門前でも見た桜が、ここにも咲いていた。
かばんを席の横のフックにかけて、座ろうと椅子に手をかけてーー……って、え?

私は、視界の端に写ったモノに気付いて、顔を上げた。

「瀬凪……くん?!」

横に、さっきの、失礼な男子が、いた。
見間違いかと思って、ごしごしと目をこする。
また目を開けても、そこに見える人は変わらない。

まさかの、隣。

席、隣。

「俺の名前知ってるんだ?」

瀬凪がまた、さっきみたいにニヤリと笑った。それがなんだか、癪に障る。

「しっ…知りたくて知ったんじゃないし」

「へぇ、それでも覚えてんじゃん。記憶力よすぎね?」

瀬凪は、バカにしたように言った。
褒めてないでしょ、絶対。

はっきり言って、暗記科目は得意じゃない。
ましてや社会は、苦い思い出しかない。佳那は、いつも満点を取っていた気がするけど。
まぁ、佳那は元々受験する予定だったから……。

瀬凪は、「あ、そだ」と、手を打った。

「じゃーさ、社会、覗いてい?」

「はぁぁ?! ダメに決まってんでしょ!」

瀬凪の突拍子もない言葉に、私は首を振った。私、授業中はラクガキして、この端っこの席を満喫したいんだから。

「ひっでぇー」
瀬凪が口をとがらせる。

でも、意外と……普通の男子と変わらない、かも? さっきの邪魔とか言ってたのも、急いでたからかもしれないし。

そんなに悪い奴でもないかも、なんて思っていたら。

「てか、お前髪ボサボサすぎんだろ! やまんばみたいだぞ?」
瀬凪が、ゲラゲラ笑いながらそう言ってきてーー

……やっぱ無理!
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