妖怪の妻になりました
 山奥。獣道すらもないような薄暗く鬱蒼と木の生い茂る場所に、この家は建っている。もっとも、家と言うよりは結界のようなものらしい。

 間違って何も知らない人が迷い込むことのないように、彼の妖力でしっかりと囲まれているそう。……私には、立派な木の家にしか見えないけれど。

 そんな場所に、この妖と二人っきりで住んでいる。理由は簡単、彼が伴侶に選んだから。しがない町娘である私が妖に嫁入りすることになった顛末は、語ろうと思えば長くなる。今は置いておこう。

 ただ一つだけ言えることは、優しく美しく、たまに陰りのある彼を愛していた。そして彼も。
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