社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
「一人で歩けれる?」

 恐る恐る聞けば、くるみは〝ひゃわひゃわ〟と楽しげに笑いながら「無理れしゅね」と実篤(さねあつ)に身体を預けてくる。

「じゃけ、お願い。連れてって?」

 挙げ句上目遣いでそんな風におねだりをしてくるとか、この子はどれだけ小悪魔なんだろうか?

 くるみがキュゥッとしがみついてくるたび、薄い布地越しにふわふわの胸が否応なく押し当てられてくる。
 そのせいで、下の方では息子さんが「お父さん、まだですか?」と騒ぎまくりなのだ。
 そろそろなだめるのも限界だし、マジで勘弁してくれと思ってしまう。


 はぁ~っと大きくため息をつくと、実篤は観念したように

「ちょっとごめんね」

 そう声を掛けてくるみの膝裏(ひざうら)に腕を差し込んで、横抱きに抱え上げた。

(う〜。生足っ)

 途端、手のひらにくるみの温かな地肌の感触が伝わってきて、正直「かーなーり! 限界だ!」と感じてしまう。



「あれれ? 実篤(しゃねあちゅ)しゃ、お手手三本(しゃんぼん)……?」

 キョトンとした様子でくるみが言ってくるから、心の中で(んなわけなかろうよ!)と突っ込みを入れつつ、(それ、手じゃなくて(のぉて)アレじゃけぇね⁉︎ くるみちゃん、絶対分かっちょるじゃろ?)と言い訳をしてみたり。


「くるみちゃん、お願いじゃけ、あまり(えっと)動かんちょいて?」

 そう声を掛けながら、実篤は先刻からずっと、一人で(もだ)えまくりだ。
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