社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
「俺、客よ? そこに残っちょるパンだって全部買ってやるって言いよるんじゃん? 問題なかろ?」
そもそも男が指差す棚には、パンなんて残っていないように見えた。
雰囲気からして、あらかた売れてそろそろ店仕舞いを始めようかという頃に、この男に目を付けられたらしい。
泥酔気味と思しき茶髪の男が、すぐ先の酒蔵ブースで配られていた紙コップを片手に、もう一方の指輪だらけの手を女の子に伸ばして。
それじゃなくても小柄に見える女の子が、刹那その手から逃れるようにギュッと身体を縮こまらせたのが見えた。
それを見た瞬間、実篤は思わず彼女に伸ばされた男の手を横合いからグッと握ってしまっていた。
本部からは警察が到着するまで「決して手出しはするな」と言われていたのに、これ。
本当は相手に声を掛けて、パン屋の女の子との間に立ちはだかるだけで事足りたはずなのだ。
「んだよ、おっさん。離せぇやっ!」
急に横合いから手を掴まれ、あまつさえグイッとひねられたのだ。
酔っ払ったガラの悪い男が、怒りの矛先を実篤に転嫁してこないはずがない。
だけど「そのほうがええわ」と実篤は心底思った。
そもそも男が指差す棚には、パンなんて残っていないように見えた。
雰囲気からして、あらかた売れてそろそろ店仕舞いを始めようかという頃に、この男に目を付けられたらしい。
泥酔気味と思しき茶髪の男が、すぐ先の酒蔵ブースで配られていた紙コップを片手に、もう一方の指輪だらけの手を女の子に伸ばして。
それじゃなくても小柄に見える女の子が、刹那その手から逃れるようにギュッと身体を縮こまらせたのが見えた。
それを見た瞬間、実篤は思わず彼女に伸ばされた男の手を横合いからグッと握ってしまっていた。
本部からは警察が到着するまで「決して手出しはするな」と言われていたのに、これ。
本当は相手に声を掛けて、パン屋の女の子との間に立ちはだかるだけで事足りたはずなのだ。
「んだよ、おっさん。離せぇやっ!」
急に横合いから手を掴まれ、あまつさえグイッとひねられたのだ。
酔っ払ったガラの悪い男が、怒りの矛先を実篤に転嫁してこないはずがない。
だけど「そのほうがええわ」と実篤は心底思った。