社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
6-3.会いとぉない人
それじゃあ(ほいじゃあ)、行ってきます」

 車から降りて、わざわざ運転席側に回り込むと、窓を開けた実篤(さねあつ)に、くるみがニコッと微笑みかけてくれる。
 その笑顔に、実篤は(今日も【俺の】くるみちゃんは凄く(ぶち)可愛いけぇ)と頬を緩めた。

 くるみが着ているくすみ感のあるグレージュカラーのラベンダーワンピースは、サテン生地の上に刺繍入りのレースが重ねられた落ち着いたデザインだ。
 今はコートの下で見えないけれど、それを脱いでも七分袖のレースが彼女の二の腕を隠してくれることを実篤は知っている。

 前に家に遊びに行った時、くるみが「派手すぎん?」と着て見せてくれたからだ。
 派手すぎるどころか、上品なデザインのそのドレスは、くるみによく似合っていて。
 実篤は素直に「全然派手じゃないし、ぶち似合(にお)うちょるよ?」と告げて、彼女を照れまじりの笑顔にさせた。

 今日の同窓会は、市内にある観光ホテルのイベント会場で行われる。
 参加人数は一〇〇名前後と結構大掛かりな同窓会らしいのだが、この辺りだとそこぐらいしかその人数が収容出来る会場がないのだ。
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