社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
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五月十九日(ごがつじゅうくんち)はくるみちゃんの誕生日じゃん?」

 三月いっぱいを目処に引っ越しラッシュもほぼ終わり、クリノ不動産の繁忙期もやっとひと段落が付いたということで、四月の月初めに広島(県外)に住む実篤(さねあつ)の両親へ婚約のあいさつに行った二人だったけれど。

 引っ越し準備もさることながら、くるみの誕生日までに結婚指輪を何とかしたいと思っている実篤だ。

 彼女の誕生日を目処にしているのは、くるみに誕生日プレゼントは何がいいかと尋ねたら、実篤とペアになるリングが欲しいと言われたのがきっかけになっている。

「結婚指輪は誕生日プレゼントとは別に用意するつもりなんじゃけど……ホンマにプレゼント、ペアリングでええん?」

 実篤の言葉に、くるみが慌てたようにフルフルと首を横に振ったのだ。

「うち、年明けにも実篤さんにアクセサリー()うてもろうちょります。実篤さんはあれ、クリスマスプレゼントじゃとか言うちゃったですけど……イヤリングとチョーカーをくれたけん、明らかにひとつ多いです。それに――」

 そこでギュッと実篤の手を握ると、くるみが大きな目で実篤を見上げてくる。

「うちら、今から結婚するでしょう? 実篤(さねあつ)さんもうちも自営業じゃけぇ調子のええ時は沢山(よぉけ)(もう)かって気が大きゅうなりがちです。けど……落差が激しいんも雇われの身とは違うところじゃって思うんです。じゃけぇね、もしもに備えて無駄遣いはなるべくせんようにしちょった方がええかなって思うんですけど……どうですか?」

 年下なのに堅実。
 きっとそれはある日突然事故で両親を失うと言う経験をして、生活を一変することを余儀なくされたくるみならではの発想なんだろう。

 実篤は年齢こそ自分の方が上だけれど、くるみのそういう考え方を心の底から尊重したいと思った。


「それにね――」

 そこでゴニョリと恥ずかしそうに言葉を揺らしたくるみにキョトンとしたら、「それに……もし。もし赤ちゃんが来てくれたりしたら……うち、しばらくの間お仕事お休みせんといけんなる思いますよ?」

 仮につわりが酷くなかったとしても……女性であるくるみが産前産後、働くのが無理になるのは当然のことだ。

 照れながら〝実篤との子供を望んでいる〟と匂わせてきたくるみに、実篤は心臓を鷲掴(わしづか)みにされて。
 雄としての本能が、好きな女性を(はら)ませてもいいと許可してもらえたことに、狂喜乱舞する。
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