社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
「うち、お団子を作ろうかと思うちょるんです。――それで、あのっ、もし良かったら食べにいらっしゃいませんか(来ちゃってんないですか)?」


 クリノ不動産も、くるみの木も、水曜日がたまたま定休日で、火曜の夜ならお互いに少々夜更かししても問題ない。

 それもあってだろうか。

 憎からず想っているくるみからのいきなりのお誘いに、実篤(さねあつ)は何と答えたらいいのか戸惑ってしまう。 


 その()が苦しいみたいに、くるみがいそいそと取り繕うように更に言い募った。

「あ、あのっ。実はひいきにしちょる業者さんから良い(ええ)団子粉をお試しで(もろ)ぉーたんです。せっかくじゃけぇ使(つこ)ぉーてみたいんですけど……ひとりで食べるんは寂しいなぁ〜思ぉーて」

 言われて、くるみが大学を卒業して程なくして両親を事故で一気に亡くしたのだと話してくれたのを思い出した実篤だ。
 寂しいと言われた途端、「くるみちゃんさえ迷惑じゃないんじゃったら、俺は逆に大歓迎じゃわ」と身を乗り出していた。

 実篤がくるみに抱いている気持ちと、くるみが実篤に対して持っている感情は、似て非なる物なのかもしれない。

 だけど――。
< 36 / 419 >

この作品をシェア

pagetop