社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
***
「あ、社長。一葉ちゃんのよだれが背中にベッタリついちょりますよ」
「マジか。さっきまで一葉をおんぶしてたけんじゃろぉーな」
言われて、実篤は一葉を片腕に抱いたまま器用にベージュのジャケットを脱いだ。
赤子の握りこぶし大ぐらい丸くジャケットが濡れているのを見て、思わず笑みが漏れた実篤だ。
娘が生まれてからこっち、実篤は黒っぽいスーツは着ないようにしている。
何故なら濃い色合いのスーツは、こんなふうに一葉を抱いている時、彼女が垂らす涎や鼻水がつくと、テカテカ光って目立つからだ。
だが、今日みたいに薄い色の上着なら乾けばまぁ問題はないだろう。
一葉のおむつかえのために用意してある水九十九.九%のウェットティッシュで濡れた部分を拭うと、実篤は脱いだジャケットを椅子の背もたれにかけた。
ここ最近は前歯が生え始めたことも手伝って、涎がよく出る一葉だ。
涎掛けはしているけれど、タラーッと落ちてくる涎は容赦なく大人を襲う。
「ところでくるみさんの熱、どんなですか?」
田岡に聞かれて、実篤は
「昨日よりは大分下がったんじゃけどね。まだ辛そうじゃけん油断は出来んのよ」
と吐息を落とした。
くるみは別に風邪をひいたわけではない。
どうやらくるみ、乳腺に母乳が溜まって起きる急性うっ滞乳腺炎と呼ばれるものに罹ってしまったらしいのだ。
これ、胸に触ると硬くシコった部分が分かるので、そこをほぐすようにしながら、とにかく乳腺に溜まった母乳を赤ちゃんに飲んでもらって排乳することが大事らしい。
「ふぇっ」
と、腕の中で一葉がむずがり始めて… …。
実篤はそれに押されたようにふと壁の時計を見やると、「ごめん、ちょっと一葉をくるみんトコ、連れてって来るけん。すぐ降りてくるけど、少しだけ席外さしてもろーてもええ?」と田岡と野田に謝った。
二人は
「大丈夫ですよ。休憩がてらゆっくりしてらしてください。何かあったら内線で呼びますけぇ」
とうなずきあってくれた。
「ホンマ、助かる」
クリノ不動産は、今日も従業員たちが社長に優しい。
「あ、社長。一葉ちゃんのよだれが背中にベッタリついちょりますよ」
「マジか。さっきまで一葉をおんぶしてたけんじゃろぉーな」
言われて、実篤は一葉を片腕に抱いたまま器用にベージュのジャケットを脱いだ。
赤子の握りこぶし大ぐらい丸くジャケットが濡れているのを見て、思わず笑みが漏れた実篤だ。
娘が生まれてからこっち、実篤は黒っぽいスーツは着ないようにしている。
何故なら濃い色合いのスーツは、こんなふうに一葉を抱いている時、彼女が垂らす涎や鼻水がつくと、テカテカ光って目立つからだ。
だが、今日みたいに薄い色の上着なら乾けばまぁ問題はないだろう。
一葉のおむつかえのために用意してある水九十九.九%のウェットティッシュで濡れた部分を拭うと、実篤は脱いだジャケットを椅子の背もたれにかけた。
ここ最近は前歯が生え始めたことも手伝って、涎がよく出る一葉だ。
涎掛けはしているけれど、タラーッと落ちてくる涎は容赦なく大人を襲う。
「ところでくるみさんの熱、どんなですか?」
田岡に聞かれて、実篤は
「昨日よりは大分下がったんじゃけどね。まだ辛そうじゃけん油断は出来んのよ」
と吐息を落とした。
くるみは別に風邪をひいたわけではない。
どうやらくるみ、乳腺に母乳が溜まって起きる急性うっ滞乳腺炎と呼ばれるものに罹ってしまったらしいのだ。
これ、胸に触ると硬くシコった部分が分かるので、そこをほぐすようにしながら、とにかく乳腺に溜まった母乳を赤ちゃんに飲んでもらって排乳することが大事らしい。
「ふぇっ」
と、腕の中で一葉がむずがり始めて… …。
実篤はそれに押されたようにふと壁の時計を見やると、「ごめん、ちょっと一葉をくるみんトコ、連れてって来るけん。すぐ降りてくるけど、少しだけ席外さしてもろーてもええ?」と田岡と野田に謝った。
二人は
「大丈夫ですよ。休憩がてらゆっくりしてらしてください。何かあったら内線で呼びますけぇ」
とうなずきあってくれた。
「ホンマ、助かる」
クリノ不動産は、今日も従業員たちが社長に優しい。