社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味⁉︎
 不動産業を営んでいると、それなりに若いお客さんも来店するのだが、そのたびに実篤(さねあつ)は思うのだ。

(みんな、普段はどこに隠れちょるん?)
 と。

 そんななので誰かの後続車両になっているわけでもなし。チラチラとくるみの顔を気にしてしまえる実篤だ。

「実篤さんは絶対良い(ええ)お父さんになられます(なっちゃってです)!」

 言った瞬間フワッとくるみの頬に(しゅ)が差したように見えたのは気のせいだろうか。

 二人っきりの車内。
 こんなことを言われたら、図々しくもくるみちゃんとの〝結婚〟を意識してしまうじゃないか、とドキドキソワソワの実篤だ。


「――と、年の離れた弟と妹がおったけん、そう見えただけじゃと思う、……よ?」

 何だか恥ずかしくて。
 ただ一言「有難う」と返すことも出来なかった結果、しどろもどろな上に可愛げのない物言いになってしまった。

それ(ほい)でも、ですっ!」

 そんな実篤に、フンッと鼻息も荒く力説してくれるくるみに、実篤は〝心の中〟、「くるみちゃんも良い(ええ)お母さんになりそうなじゃったよ?」と照れまくりながらつぶやいた。
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