eスポーツ!!~恋人も友達もいないぼっちな私と、プロゲーマーで有名配信者の彼~
ヤマトを流れには乗らせない!
試合開始とともに私はエクスプロージョンを発動し、その爆炎に身を隠しプリズミックアローを発動する。
ヤマトは守りの姿勢なのか、ガードを長く張っている。
プリズミックアローをガードしているラピスを、ストロベリーで投げにかかる。
『おおっ! これはあの青龍杯でも見せた、ハル選手の近接ストロベリーかー⁉』
投げから浮いたラピスの体に合わせてダッシュ攻撃、空中上、通常上攻撃、アイシクルチェイン、杖攻撃を合わせる。
――今までのコンボじゃないよ。ずっと練習してきた新コンボ。
『なんだこれは……⁉ こんなコンボパターンは見たことがありません。まさかハル選手、また新たにコンボを開発していたというのかー⁉』
まぁ、ラピスみたいな中重量のキャラじゃないと確定しないけどね。
ダメージ0から、撃墜可能なんだよ。
「――やばすぎだろ、このコンボ!」
『どういうことだー! 先ほどの試合とは打って変わって、次はハル選手が一瞬でヤマト選手を撃墜! 勝負は1-1となりました‼』
地割れのようなオーディエンスたちの声。
ドームにあるモニタの表示されているネット配信のコメントも盛り上がりを見せている。
同時接続数、きっとすごいんだろうな。
でも、今は目の前の勝負に集中する。
深呼吸をする。
『どこまでこのふたりは私達を熱狂させてくれるのかー⁉ REVO、これが最後の試合になります! 第3試合開始ぃいいいいい‼』
勝負が始まった瞬間、どちらも様子をうかがうこともなく、真っ向から相手に近づく。
ラピスの剣と、ストロベリーの杖の攻撃が相殺され、お互いのキャラが後ずさりする。
「ここで引けないでしょっ」
私はそのまま攻撃の手を止めない。杖を大きく振ってリーチの長い攻撃を仕掛ける。
ヤマトはそれを最小限のジャンプで躱し、そこから攻撃の持続が長い蹴りを繰り出す。
間一髪、それを回避する。
――危ない、今のが当たってたら最大コンボを決められていた。
『なんという攻防でしょう! お互いに一度でも相手の攻撃をくらったそのまま撃墜されるような相手です。ふたりの緊張がここまで届いてくるようです!』
ダッシュで間合いを詰めてくるラピスにストロベリーの杖でけん制する。
立ち止まらせないと魔法さえ詠唱できない。
さっきと同じように投げから繋ぐ方が賢いっ?
見ている画面がどんどんスローモーションに見えてくる。
お互いに攻撃を与えられていないのに、画面のなかではキャラたちが動き回っている。
『こんな美しい戦いを見たことがありません……まるでプロモーションビデオのように、互いの攻撃、躱し方、ガード、全てが技術とセンスの塊です』
――やばい。このままじゃ攻撃を食らう。
選択肢は、空中に逃げるか、横に避けるか。
横に避けた場合、連撃を展開されたら攻撃が必ず当たる。
苦しいけれど、これは空中に逃げるしかない!
私はできるだけ隙の少ない小ジャンプをする。
ヤマトは、そんな私の行動を予測していたかのように空中に追ってきた。
――うそ。
一点読み……?
私が回避を選択しないことを読んでいたんだ。
ラピスが剣を振りかぶるのが見える。5フレームもないその動きがはっきりと見えた。
ここから攻撃を避ける選択肢はない。
必ず当たる――
『ヤマト選手のラピスがついにストロベリーを捉えた! そのままコンボが始まる! これは苦しいぞおおお!』
――苦しいどころじゃなく、これはもう抜け出せない。
ヤマトがコンボを失敗するのを祈るしかない。
でもきっと、失敗しない。
なんてきれいなコンボなんだろう……。
『美しい連撃、ヤマト選手! たった一振りの斬撃からハル選手を撃墜ー‼』