eスポーツ!!~恋人も友達もいないぼっちな私と、プロゲーマーで有名配信者の彼~
めちゃくちゃなコメントばかりだ。
私への誹謗中傷もあって、嫌な汗が出てくる。

ヤマトはコントローラーを操作していた手を止め、画面をまっすぐに見た。

「今回、お騒がせしているようで申し訳ないです。本当は言いたくないんですが、すいません。言わせてください。……e-Japanは女性のプレイヤーや動画クリエイターとのコラボをNGにしている訳ではありません。お話しが来たことも今までありますが、スケジュール等の関係で今までしていなかっただけです。なので、ハルさんに見当違いな誹謗中傷を投げかけるのはおかしいことです。そのことを、ご理解ください」

コメント欄の流れが、一瞬止まる。
少しだけ間を置いて、まるで爆発するかのようにコメントが流れ出した。

『いや、ファンは傷ついたって話なんです』

『そうですよね。ハルさんの悪口言っている人、ちょっとおかしい……』

『ていうか、ハルは女ってことを隠してたの?』

『↑それ。だいたい、競技シーンって男が多いのに急に女が出てくるの違和感』

ヤマトはだんだん目が座ってきている気がする。

「ハルさんは女だということを隠されていません。仮にハルさんが出会い目的だったとしても、それを咎める権利が誰にあるんですか? 第一に、ハルさんを宅オフに誘ったのは俺ですよ。ハルさんを責めるくらいなら、俺に文句を言ってください」

『ハルはファンの気持ちを踏みにじったんだよ』

『うちらのことも考えて』

『……ゲームしてたのは本当にハルさんだったんですか?』

『怪しいよね。男に金渡して、かわりにプレイさせてたんじゃないの?』

『出会うために代理プレイしてもらったってこと? 最低やん』

ヤマトは肩を震わせ、耳を真っ赤にしている。
これは、あの日の照れているヤマトじゃない。
怒っているのが画面越しにでも伝わってくる。

ヤマトは深呼吸をしてから、話し始めた。

「――ハルはそんな女の子じゃない。実際に戦ったけど、ハルのゲームの腕は本物。ずっとアタックウォリアーズをしていた俺から見ても、惚れ惚れするようなプレイだった。そのプレイをするために、彼女はひたすら努力をしたはずなんです。その努力をバカにするような人は、俺たちプロゲーマーをバカにしているのと同じです」

ヤマトは、まるで喰らいつくような眼で画面の前にいた。

……私のために、怒ってくれている。色々な立場や事情があるなかで、それでも私を守ろうとしてくれているのがわかる。同じゲーマーとして、友達として……。
涙が溢れて、止まらない。

「ごめん」と「ありがとう」で胸がいっぱいになる。


『でもそんなこと言われても、ハルさんが本当にプレイした証拠とか出せないでしょ?』

『私たちはヤマトのためを思って言ってるんです』

『大事な時期なのに、女性ファンを減らすことはダメだよ』

それでも続くコメント。でも、ヤマトは怯まない。
なにか、覚悟を決めたようにも見えた。

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