eスポーツ!!~恋人も友達もいないぼっちな私と、プロゲーマーで有名配信者の彼~
会場に入ると、すでにツバキさんの戦いは始まっていた。

ちょうどメイン配信で戦っているらしく、コメント欄も少しざわついた雰囲気だった。

『ハルさんのほかにも女子選手いたんだ』

『もう決勝寸前だろ? 初めて見る名前だけど』

『今回の青龍杯は新参が多い』

色々なコメントが流れてくるが、ツバキさんは気にもしていないようだ。

「それでは、試合開始!」

実況の掛け声とともにゲームがスタートする。

ツバキさんの使用キャラクターは……ルナ、か。

ルナは攻撃のリーチがとにかく長い。全キャラクターのなかで一番だ。

金髪の女性キャラクターで、所持している武器はムチ。
なんとなく、ツバキさんのイメージにはぴったりだと思った。

魔法などの飛び道具はないが、ムチのリーチがそれをカバーしている。

ツバキさんと戦う選手は……ロナウ選手。アマチュア大会で上位に入っているプレイヤーだし、これは簡単にいかない相手だと思うけど……。

そんな私の考えを見抜いたのか、ツバキさんは私の方を見るとくすりと笑った。

「格の違いをお見せいたしますわっ!」

ロナウ選手が攻撃をしようとしても、ツバキさんのルナは一切近づけさせない。
攻撃の間合いに入ることすらできず、一方的にムチを浴びせられていく。

横方向、斜め、下段、先端が鋭いムチは、長くても当たり判定はシビアだ。

それなのに、素早く動く敵をいとも簡単に潰していく。

「スネークショットで仕上げですわっ!」

ルナの地を這うような攻撃で、ロナウ選手のキャラクターは場外まで弾き出される。

ツバキさんはひとつも攻撃を受けず、ノーダメージで勝利した。

「ツバキ選手! ロナウ選手を完封ーーーー‼」

会場が揺れるような歓声が巻き起こる。


――強い。


間違いなく彼女は決勝に行くだろう。

私は瞬きさえ忘れて、彼女の試合に見入っていた。
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