eスポーツ!!~恋人も友達もいないぼっちな私と、プロゲーマーで有名配信者の彼~

「あー、面白かった。ハル、そろそろ腹減らないか?」

「そうだね。なにか食べようか」

「ここ、おいしいフルーツのデザートがあるんだって。そこにする?」

「フルーツ? 実は私、フルーツ好きなんだよね」

「知ってる」

ヤマトはそう言うと笑っていた。


「え、なんで知ってるの?」

「前にイチゴが好きって言ってた。それに、飲み物だっていつもオレンジティーとかパイナップルとか、そんなのばっかり頼んでるもん」

――ヤマト、私が飲んでるものとか、言ったこととか覚えてくれているんだ。

こんなふとした瞬間にときめいてしまい、今ふたりでデートしているということに気づかされてしまう。

お店に入るとちょうどランチタイムで、私たちはパスタのセットを頼む。
そして、お店のオススメのフルーツパフェも。

ヤマトは甘いものはそんなに食べないらしく、注文はひとつだけにした。

「パフェのスプーンはおふたつですよね?」

気の利く店員さんがそう聞くと、ヤマトは耳を真っ赤にしながら「ひとつです!」と答えていた。

「ああ、同じスプーンで食べられるのですね」

店員さんは納得したように厨房に戻っていって、私たちは席から崩れ落ちそうになってしまう。

周りを見ればカップルばかりで、ヤマトも意識しているのかもしれない。

楽しいけど、緊張して、ドキドキする。
こんな気持ちは、初めてだ。

ヤマトも、私と一緒の気持ちでいてくれたなら、嬉しいんだけど。

パスタのあとに出てきたパフェはフルーツにたくさんの生クリームが乗せられていて絶品だった。
特に、マスカットがおいしい!

「ヤマトも一口食べる?」

そう聞くと、ヤマトは顔を真っ赤にしてしばらく黙った。

さすがに調子に乗ったかもしれないな、と反省していると「……食べる」と小さな返事が聞こえた。

自分で言ってあれなんだけど、いいのかな……。

スプーンに大きなマスカットを乗せ、ヤマトの方に向ける。

ヤマトは大きな口を開けてそれを食べた。

「う、うまいな」

どこかわからないところを見ながら話すヤマトが可愛い。

「そうでしょ」

後ろで店員さんがニヤニヤしながらこっちを見ているのを、私は見逃さなかった。

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