eスポーツ!!~恋人も友達もいないぼっちな私と、プロゲーマーで有名配信者の彼~
REVOは都内にある大きなドームで行われる。
電車を待ちながら、他県の選手は前日にこっちに入ったんだろうな、なんてことを考えていた。
青龍杯のときは他の選手のことなんて考える余裕もなかったけど、今はふとそんなことを考える。
私自身が「選手」という自覚を持ったからかもしれない。

電車に揺られていると、私のスマホはどんどんと通知を増やす。

地元の友人、高校の友人、バイト先の店長や先輩……前はあれだけ怖かったSNSにも、私のファンと言ってくれる人達からたくさんメッセージが届いていた。


『距離はあるけど、今日はずっとみんなで応援してるからね!』
『みんなで集まってREVO見るから‼ がんばれ‼』
『うちらのグループは会場まで行くからね♪ 落ち着いていこっ!』
『上林さん、シフトは週1……、いや、月1でもいいので籍を置いといてください』
『店長は朝から神社にお参りをして、優勝を祈願しています』
『ハルさんに憧れてアタックウォリアーズを始めたんです! 今日の優勝、ずーっと願っています』
『女性選手でも活躍できることを知って、希望を持ちました。私もハルさんのようになりたいです。今日、会場にも向かいます。目指せ、優勝!』

こっちに引越してきて恋人どころか友達もいなかった私。
それが今はどうなんだろう。
ヤマトに出会って、アタックウォリアーズを知って、
こんなにもたくさんの人に応援してもらっている。支えられている。

胸の奥がぽかぽかとしてくると同時に、大会に出場することで、私以外の色々な人の気持ちを背負っていることにも気づかされる。

そして、それはほかの選手も同じ。

「春菜、おはよ」

電車で隣に座ってきたのは、ヤマトだった。


「おはよ、ヤマト」

別に示し合わせて電車に乗ったわけではない。
だけど、きっとヤマトも早めの電車に乗るだろうと思っていた。

ヤマトも、おじいさんの大きな想いを背負って今日、会場に向かっている。

「ヤマト、昨日は寝れた?」

「9時には寝た。春菜は?」

「私も同じくらいかなぁ」

「やっぱり春菜って肝が据わってるな。普通、REVOみたいな大会の前って緊張して寝れないんだぞ」

「だって勝ちたいから寝たいじゃん!」

私達は顔を合わせて笑う。

今日、必ずヤマトと戦うことになる。
まるでそんなことなんてないみたいに、私たちの間には柔らかい空気が流れていた。

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