6月の雪 ―Special Snowflake―

 ギリギリに着いた学校には、私の後にも飛び込んでくる生徒の姿が見える。その様子に内心ホッとした。

 ここのところまた遅刻が増えて、担任にも文句を言われたばっかりだったから。

「……」

 一瞬、学校に来なくていいなら、蒼生くんが羨ましいなって思ったりした。でも、家にだって居たくない。

 私の居場所って本当に無いんだな……。

 バイトして家を出るなんて気が遠くなりそうだし、あの般若だってまたうるさく言うんだろうし……。

「新菜ー、おはよう!」

「あ、おはよう」

 教室に向かう廊下で、ひな子と柚に声をかけられた。余裕な顔を見ると2人は遅刻組ではなさそうだ。

「新菜ちゃん今日も遅かったね……って、頬どうしたの?」

「あ、うん、ちょっと引っ掻いちゃって」

 頬というよりアゴに近いその場所に大きめのばんそうこうを貼った。今も少し痛む傷口をそっと手で覆った。

「そうなんだ。なんだか最近ボーッとしてるから気になってたんだよ」

「そうかな?」

「蒼生のこと?」

「え?」

「考え事」

 ニヤニヤ笑いながら、ひな子が言った。

「違うよ……般若の面ってさ、嫉妬や恨みの篭る女の顔っていわれるんでしょ? 女の嫉妬って醜いよねって考えてた」

「はあ? なにそれ。新菜、何言ってんの?」

「もう新菜ちゃん最近ヤバイ~」

 2人が意味深な私の言葉にケラケラと笑い出した。

「……」

 女の嫉妬か……私もSSFを辞めたいなんて、蒼生くんとあの年上っぽい女性の姿を見たからだし……。ママのこと言えないよね……。

 きっと、私だって醜い……。
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