6月の雪 ―Special Snowflake―

 うんざり。

 ママが家を出ると、私はドサッと音をたてるようにリビングのソファに転がった。そのまま時計を見上げると、すでに8時を過ぎていた。
 学校までは電車を使って40分はかかる。今日もまた遅刻……。
 早く起きなきゃって分かってはいるけど、毎日ダルくって転がった私の体は石のように固まった。

 私、安達(あだち) 新菜(にいな)の毎朝はいつも同じ。ママの同じ言葉、表情、この繰り返しに日々うんざりしていた。幼い頃に離婚した両親。それからママは私に厳しくなった。

 さっきの言葉のように『片親だから躾が出来てないとか、成績が悪いなんて誰にも言わせない』それが口癖になって、私になんでもうるさく言うようになった。学校のこと、勉強、身なり、家での過ごし方、時間の細かさ、言葉遣い……昔はそんなことなかったし、私に注意出来るほどママだってすべてがパーフェクトなんかじゃない。
 そのくせ自分は仕事、仕事で、私のこと全然相手にもしないくせに。

 何かあれば、新菜のために働いているとか言う……。

 もう、そんなのうんざりだった。

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