6月の雪 ―Special Snowflake―

「安達、月城、どうした? 探し物か?」

 声の方に目をやると、大量の大きな段ボールを抱えた吉岡先生の姿があった。

「いえ、もう見つかりましたから」

 蒼生くんは、その手紙を自分のポケットに押し込むと、吉岡先生へ向かって言った。

「そうか? もうすぐチャイム鳴るから急げよ」

「はい」

「行くぞ、新菜」

 蒼生くんに手を引かれ歩き出すと、再び吉岡先生に呼ばれた。

「安達、ちょっといいか」

「……?」

 少し離れた吉岡先生に近づくと小さな声で

「月城には気をつけろ」
 
 そう言った。

「え?」

「先生たちの間でもいいウワサは聞かないんだ」

「……」

「新菜ー」

「あ、うん。今、行く」

 私が蒼生くんへ向かい歩き出すと、何もなかったように吉岡先生は笑って手を振った。

「……」

「吉岡先生、なんだって?」

「……ううん。ゴミは教室で捨てろって」

「ふーん」

 蒼生くんの顔を見ると私の言葉に納得していないようだった。

 でも、さっきのはなんだったんだろう?

『月城には気をつけろ』って。

 もし本当に蒼生くんのことで何かあっても、生徒に直接言ってくるかな?

 私が彼女っていうことが先生の耳にも入っているってことなのかな?

 それからだった、何となく吉岡先生のことが気になり始めたのは。
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