初恋は、君の涙に溶けていく
私の名前は七瀬七花。

高校受験を間近に控えた中学三年生の十五歳。

七つの花と書いて〈なな〉と読む自分の名前は可愛すぎて、ちょっと恥ずかしい。

名字と名前の両方に七の文字が入っていて、無駄に韻をふんでいるのも、アニメキャラの名前みたいだし。

時々、初対面の人に「本名ですか?」なんて訊かれることもあるけど、私は芸能人でも何でもない普通の女の子なんだから本名に決まってる。

せめて外見だけでも芸能人かアニメのヒロインみたいに美少女だったら、自慢の名前になったかもしれないけど、現実は甘くなくて。

私の外見は人並み(以下ではないと信じたい)レベルなので、ぜんぜん美少女じゃないし、

頭の中身も平均(の成績をギリギリキープしている)程度で、ヒロイン要素はどこにもない。

私は名前負けしていることがコンプレックスな平凡人間なのだ。

「そんなことないよ。七花はかわいいと思うよ」

そう言ってくれたのは、やっぱり八尋で。

両親以外で、私のことをかわいいと褒めてくれるのは、八尋だけだと思う。
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