恋と旧懐~兎な彼と1人の女の子~



愛深は溢れんばかりの気持ちを,両手を一杯に広げて表現した。

素直で直球で。

勝手に謝って,だけど愛深らしすぎる言葉の選び方。

後半は少し共感してしまって,同じポーズはとらないものの,自覚できる形で微笑んだ。



「ふっ俺も。今度こそじゃあね,愛深。また来週」



『また』なんて,珍しいことを言ったなと思う。

まぁ,愛深は何とも思ってないでしょ。

背を向けて,歩く。

こんな休日も,たまにはいいかもしれないと,一瞬だけ本気で思った。

折角すっきり別れたのに,振り返るのは何だかもったいない気がする。

そう,そんな気がする。

でも,それだけ。

俺は,特に振り返る予定もないのに,自分に言い聞かせた。

別に振り返って,俺がどうにかなる訳じゃない。



「あつ…」



日差しにやられたか。

1日を思い返せば,耳の奥に,心音が大きく響いていた。
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